ミュージアム 15 11月 2024 ダ・ヴィンチは誰に微笑む/現代アートの訳の分からなさがよく分かる ずっと見た映画はブログに書かずにfilmarksのページ(https://filmarks.com/users/dogufs)に書いているけど、なんとなくここに書いておきたかったので書いておく。 映画としてはそれほど面白くないけど、「アート」について考えさせられた映画、厳密に言えば「現代アートの訳の分からなさがよく分かる」映画について書いておく。 2021年に制作されたフランス映画「ダ・ヴィンチは[…] 続きを読む
日記/雑記/妄談 27 5月 2024 「津軽のカマリ」「スケッチ・オブ・ミャーク」/風土性と音楽性 映画「津軽のカマリ」を観た。 昔々、私は高橋竹山のCDをひたすら聞いていた時期があった。彼の弾く三味線は当時色々と大変で荒んでいた私の心の深いところに届き、私は生き抜く事が出来たのだ。 思い入れの強すぎる題材に関する映画は微妙なことは多いけど、この映画は全然そんなことはなく素晴らしかった。このブログを書くくらいに素晴らしかったのだ。 子供のころに盲目になり、寒村を門付して歩いた生きるための彼の演奏[…] 続きを読む
本 2 4月 2024 伊藤計劃『ハーモニー』/高度福祉社会でのカミュ的実存問題を問う 『虐殺器官』ののちに起こった「大災禍」から生き残った人々は「国家」という枠組みではなく「生府」なる高度に発展した医療システムによる統治機構を生み出し、寿命か事故以外では人が病み死ぬことのない完全な医療福祉社会を実現していた。 そんな世界の中で息苦しさを覚える少女たちが主人公の話だ。 高度福祉社会を描くことでよりコントラストが高くなって浮き出てくる生命の尊厳や自由意志にまつわる「福祉国家」のはらむ矛[…] 続きを読む
本 21 3月 2024 虐殺器官/限りになくSFに近い純文学 現代化から見てとてもリアルに感じられる世界情勢とテクノロジーのあるディストピアな未来を舞台にした「暗殺」を専門にする軍の情報特殊部隊の構成員が主人公の、世界各国の発展途上国で起こる「虐殺」をプロデュースする「標的」を追う物語だ。 主人公は現場での実働部隊の軍人でありながら「言葉」に拘りをもつ文学好きで知的でナイーヴで傷つきやい青年でとても幼くすら見える、「そんな装備メンタルで大丈夫か??」と言いた[…] 続きを読む
映画 20 3月 2024 M3GAN/GHOST IN THE SHELL ずっと見たかったのだかいつの間にかアマプラに入っていて喜んで観た。 大体想像した通りの筋書きの想像したようなラストだが、まぁこのへんはこの系統の映画の様式美みたいなものだ。 ミーガンさんはチャッキーほど下品でも凶暴でもなく粗野でもなく、お上品で理知的で教養深く、見た目も踊りもお洋服も可愛らしくてシュッとしてはって大変よろしい。まぁAI搭載アンドロイドやしね。 不気味の谷を行ったり来たりするバランス[…] 続きを読む
映画 7 1月 2024 「さかなのこ」(2022年製作の映画)/さかなクンの愛の物語 私はさかなクンが好きだ。彼の足元にも及ばないながらもかなりの魚好きで地味な淡水魚好きであると自認している私から言わせてもらえば、それほど魚に興味のない人、例えばトウヨシノボリとヌマチチブを一見して判別できない程度のレベルの人は彼がどれだけすごいかたぶん永遠にわからないだろう。私は彼が大抵の魚の鰭条や側線の数まで把握していると知った時は畏敬の念を通り越した恐怖のようなものを覚えた。 彼の魚に対する愛[…] 続きを読む
映画 21 4月 2023 映画『Winny』/プログラムは自分自身の表現だ 先日映画『Winny』を観て来た。映画を映画館で観たのは久しぶりだ。 IT業界に身を置き、技術者であり開発者であり、そして当時を知る私にとってとても面白い映画だった。 この映画の言いたいことは、つまるところwinnyは当時世界をリードしていた技術が搭載されており、その開発改良を国家権力によってストップさせたこと、金子氏の開発者としての活動を7年も裁判で縛り付けて停止させたことは大きな国家的損失であ[…] 続きを読む
映画 31 3月 2023 PROSPECT/細部に神が宿る映画 2019年07月20日にアメリカ/カナダで公開されたらしい『PROSPECT』なる映画を見た。 想像以上に、というよりも予想を遥かに超えて素晴らしかった。 見終わった後にもう一度見たくらい素晴らしかった。 宇宙船が飛び交う戦争を描くようなハリウッド的SF映画の対極にあるが、今まで見たことのない1つの世界をちゃんと完璧に作り出している。その世界を説明不足なほどに語りすぎないのもいい。 […] 続きを読む
映画 9 10月 2022 「スペシャリスト/自覚なき殺戮者」政治的にも倫理的にも社会的にも正しい言説で真顔で嘘をつく大人の醜さと恐怖 映画「スペシャリスト/自覚なき殺戮者」を観た。 ナチスがユダヤ人の絶滅収容所を運営するにあたり、絶滅対象者の大量輸送における最高責任者のような立場であった、当時親衛隊中佐のアイヒマンは戦争終結後逃亡していたが、十数年後にアルゼンチンでイスラエルのモサドに拉致されエルサレムでナチス時代に行った絶滅収容所運営についての法廷に立つこととなった。 何百万人ものユダヤ人を虐殺した悪魔のような男を裁く法廷とし[…] 続きを読む
本 23 9月 2022 『〈わたし〉はどこにあるのか 』マイケル・S・ガザニガ 運命論を科学的に否定する せっかくブログもリニューアルしたことなのでここしばらくでとても面白かった本のことについてでも書こう。 「認知神経科学」であるマイケル・S・ガザニガ の『〈わたし〉はどこにあるのか――ガザニガ脳科学講義』で、著者によるギフォード講義の内容を本にしたものである。 原題は"Who's in Charge? Free Will and the Science of the Brain"で、「責任はだれにあ[…] 続きを読む